原題: Team of RIvals: The Political Genius of Abraham Lincoln
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評点(5点満点):4half_star
コメント
 映画Lincoln(2012)のベースにもなった伝記。残っている関係者の日記や書類をもとに、エイブラハム・リンカーンの若年期から、その死までを描いている。特に、1860年の共和党候補の指名を競った、ウィリアム・スワード(リンカーン政権の国務長官)、サロモン・チェース(リンカーン政権の財務長官)、エドワード・ベーツ(リンカーン政権の司法長官)も、リンカーンが大統領になるまでは、並行して同じ分の記述が割かれている。
 1860年の共和党の大統領候補としては、リンカーンは、他の3人に比べて、それまでの政治経歴では大きく見劣りしていた。しかも、リンカーンは、大学もでておらず、まったくの独学の人であった。大統領選挙までは、下院議員を一期務めただけで、何度も上院議員選挙などで苦杯を舐めるなど、まさに、辛酸をなめながらの政治キャリアであった。大統領になってからも、北部内の穏健派と急進派の対立のバランスをとり、南北戦争の前半は、南軍に苦杯をなめるなど、まさに、際どいバランスを保ちながらの政権運営であった。Lincolnが、なぜ、史上最高のUS大統領と呼ぶ人が多いのか。それは、本書を読めば分かると思う。

 今日、日本では、声高に実現性のない主張をメディアで語るか、あるいは、メディアに叩かれない為にに当たり障りのないことしか発言しない政治家が多いが、政治は、まさに人間という動物だけが行う所業。妥協をとりながら政策を実現するもの。本書は、政治家を志す人は、必読の書ではないだろうか。

 2013年6月の時点では、日本語訳本は出ていないようです。ページ数は、膨大ですが、おおよそ、半分は、脚注。私は、kindle版を買ったのですが、これは、脚注は読みにくい。というのも、本文のところに、脚注のマークがないので。

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