監督:オリバー・ストーン220px-AlexanderPoster

脚本:オリバー・ストーン、クリストファー・カイル、ラエタ・カログリディス

出演:コリン・ファレル、アンジェリーナ・ジョリー、バル・キルマー、アンソニー・ホプキンス

配給:コンスタンチン、ワーナー・ブラザース

公式サイト 

評点(5点満点):3star



ストーリー

アレキサンダー大王(コリン・ファレル)の生涯を描いた映画。アレキサンダーの部下で、アレキサンダーの死後に、エジプトのプトレマイオス王朝を立てた、プトレマイ(アンソニー・ホプキンス)が、語り部となって、回顧する形でストーリーをナレーションしていく。アレキサンダーは、マセドニア王のフィリップ2世(バル・キルマー)とその4番目の妻オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)の間に生まれる。フィリップ2世:26歳、オリンピアス19歳の時である。もちろん、この結婚は、当時の常のごとく政略結婚であった。フィリップ2世とオリンピアスの関係は、その後、険悪化をたどるが、フィリップ2世の5番めの妻、ユーリディケに男児が生まれ、なおかつ、一向にアレキサンダーを後継にさだめないことによって、フィリップ2世と、アレキサンダー、オリンピアスの対立は決定的なものとなっていく。オリンピアスは、アレキサンダーは、ゼウスの子であると信じ、フィリップは、自分に似ていないアレキサンダーが自分の子か疑っていた。アレキサンダーが20歳になった時に、フィリップ2世は、ボディガードの一人に暗殺されてしまう。その結果、アレキサンダーは、20歳の336BCに、マセドニア王となる。そして、ギリシア都市国家の反乱を平定した後の334BCには、ペルシア帝国と対決する為に東方遠征をはじめるが、32歳で死ぬ323BCまで、2度とマセドニアに戻ることはなく、母の顔も二度とみることはなかった。

331BCのガーガメラの戦いで、ダリウス3世こそ討ち漏らしたものの数倍のペルシア軍を破ると、ペルシア帝国は、ガタガタになり、数年後には、瓦解してしまう。そして、327BCからは、インドへの侵攻がはじまる。しかし、これは、結局、長期にわたる遠征による厭戦気分の蔓延とインド側の抵抗により失敗に終わり、324BCには、バビロニアに帰還する。そして、ほどなく、変死してしまう。この時、アレキサンダーの1番目の妻、ロクサンヌ(アフガンあたりの山岳民族の娘)は、妊娠3ヶ月であった。しかしアレキサンダーは、誰も後継者に指名する事なく世を去ってしまった。


コメント

 この映画の主人公は、アレキサンダーで、


1)父親との関係:結局、父は最後まで、アレキサンダーを後継とは指定せずに、むしろ、後からギリシアから迎えたユーリディケとの間に生まれた子を後継にするのではないかという、緊張関係にあった。(フィリップの死後、ユーリディケと男児は、オリンピアスの命で殺害される)

2)母親との関係:母であるオリンピアスは、フィリップ2世を憎んでおり、アレキサンダーは、彼女とゼウスの間に生まれた子であるとし、アレキサンダーが王になることを望んでいたばかりか、そのための行動をおこしかねない、暗い情念の人であった。しかし、彼女の懸念していたことは、アレキサンダーの死後、すべて不幸な形で実現してしまう。

3)幼いころからの親友であるへパスチオンとの男色関係

4)東方遠征と次第に緊張が増していく部下たちとの関係


などが、話の筋になっている。前半の、父親、母親、アレキサンダーの葛藤のあたりは、それなりに演出できていると思う。特に、フィリップ2世が、暗殺される前後で、眉毛ひとつ動かさず、傲然と女王席で冷たい視線をなげかけるアンジェリーナ・ジョリーは様になっている。バル・キリマーのフィリップもよい。

しかし、物語の後半になると、フィリップ2世は死んでいなくなり、アレキサンダーは、東方遠征にでて2度とマセドニアに帰還することはなかったので、オリンピアスとのやりとりは、手紙をかわしてだけとなる。中盤のハイライトは、ガーガメラの野戦の部分で、ここで相当時間を使っている。しかし、野戦ということもあり、見せるのが難しく、あまり見応えはなかった。キングダム・オブ・ヘブンのエルサレム攻囲戦にくらべるとだいぶ、落ちるような。

キングダム・オブ・ヘブンに比べて落ちるのは、スペキュタクラーな戦闘シーン、後半にしまりがなくなる脚本以外に、音楽がバンゲリスであるのもあるかもしれない。バンゲリスというと、どーしても、シンセサイザー多用なんだが、この手の映画には、あってないところがあると思う。

 この映画は、マリー・レーノルトのFire from Heaven及び Persian Boyが下敷きとなっているらしいのだが、個人的には、アンジェリーナ・ジョリーのオリンピアスで、同じマリー・レナルトのFuneral Games(アレキサンダーの死後の内乱を描いたもの)を映画化してもらいたいと思う。実は、オリンピアスは大変な人で、アレキサンダーの遺児(彼女の孫)に帝国をつがせるべく劇的な人生をおくるのだが、ジョリーが演じるときっといいものができると思われるのだが。。。。


結論

 後半が締まりがなくなってしまった。もっとも、歴史上のアレキサンダーも、後半はだめで、差し掛けのところで急死しているので、映画としてもそうなるしかなかったのかもしれないが。。この映画は、商業的に失敗作の烙印を張られているのだが、例によってDVDには、ディレクターズ・カット(167分)とファイナル・カット(214分)が出ている。このレビューは、175分の劇場公開版のDVDを元にしている。




人気ブログランキングへ
2011/01/31 追記  アンジェリーナ・ジョリーで、クレオパトラを2013年に公開する予定でプロジェクトが進行中だそうな。まだ、監督や、その他の配役は未定。原作は、NY Timesのベストセラーに選ばれているStacy SchiffのCleopatra:A Lifeで、従来のクレオパトラ像であった、色香で男を抱き込む女というものではなく、骨肉の争いを切り抜け、20年以上もエジプトを統治した政治家・武将としての側面を描いているそうな。これは、もちろん巨額の費用がかかる映画になりそうだが、監督としては難しい映画だと思う。しかし、こういう本が、ベストセラーにくるなんて、USは、懐が深い。